今回は歯周ポケットが深いとどんなリスクがあるかを深堀していきたいと思います。
前回の記事で、歯周ポケットが深いと口臭の原因や歯周病が進行して骨が溶けてしまう可能性があることをお伝えしました。
①口臭の原因
口腔内の嫌気性菌が増えると口臭が出るようになります。ヒトでは5mm以上の深いポケットにはP.gingivalis,A.actinomycetemcomitans, T.forsythiaが多く検出されると言われています。これらは嫌気性菌で、しかも歯周病原細菌でもあると言われています。
②歯周病の進行
また、深い歯周ポケットは歯周病の進行に繋がります。
こちらもヒトのデータですが、7mm以上のポケットにおいて21%~44%に2年間の観察期間で1.5mm以上のポケットの深化が認められたという報告があります。これは深いポケットによって歯周病が進行しやすくなることを裏付けるデータです。
深いポケットは歯石を取り残すい
1978年のWaerhaugの論文によるとポケットの深さが3mm以内だと歯石はほとんど取り残しがなく、3-5mmだと取り残しが多くなり、5mm以上はほとんど取り残すという報告があります。
参考動画:ポケット4mmでもこれだけ歯石がびっしり
歯磨きは効果ある?
歯ブラシのブラシの先が届くのが歯肉縁下2mmで、プラークをきちんと取り除けるのは歯肉縁下1mmまでと言われています。また、4-5mmのポケットは歯肉縁上のセルフケアだけでも(歯磨きだけでも)歯肉縁下プラークに変化が認められるが、それ以上の深いポケットは専門家による治療が必要であると言われています。
ヒトの歯周ポケット
ヒトの場合は3mm以下のポケットであれば日々の歯磨きで何とか維持が出来そうです。歯周ポケットを3mm以下にすることが1つの歯周病治療の目標になりそうです。
イヌやネコの歯周ポケットは?
人の場合は健康な歯肉溝はだいたい1mmであると言われており、犬の場合は1~3mmで猫の場合は0.5~1mmと言われています。イヌやネコはどれくらいのポケットの深さなら歯周病が進行しにくいかの明確なラインは残念ながらまだ分かっていません。健康な歯肉溝にそもそも幅があるのと、経時的なポケットの変化を調べられた論文が皆無なので、「深いポケットは悪そうだ!!」ぐらいしか分からないのが現状です。
どうすればいいの?
明確に悪くなる数字は分からなくても、ポケットが深いのは良い状態ではありません。悪い細菌が住み着きやすいためです。
そしてせっかく麻酔をかけて治療を受けるのならば、必ず毎回プロービングをして貰ってポケットの深さを測ってもらってください。ポケットの深さの変化が、治療の奏功具合の1つの指標になります。
気になる方はぜひ一度お近くのクリニックにご相談ください。